#詩 初夏
ちりんちりんと
風鈴の音が
季節の始まりを告げる
願いを込めた短冊が
ひらひらと
生暖かい風に揺れる
空へ向かって撒いた水が
放物線を描いて
スローモーションのように
ゆっくりと落ちて来る
落ちるそばから
土は一瞬のうちに
その水飛沫を
飲み干してしまう
束の間の涼しさの
向こうには
青空を渡る
小さな虹が生まれていた
季節の音が辺りに広がり
そしてまた消える
白い午後
私は待っていた
日焼けしたあいつが
今年もやって来た
2019年9月 朝日新聞 ローカル版に掲載
イラストは無料素材の借り物です
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