詩 あき
静けさが
時間の海で泳ぎ出すと
何処かでパチンと
季節の割れる音がした
中から
冷たさが吹き出して来た
色白になった風が
それを刻んでは拡散して行く
夜になると
それは熟成され
寂しさに醸造され
加速度的に広がって行く
秋になると
特に秋の始まりには
熱を帯びた愁いが
あちこちに噴出する
秋はそれを
惜しげも無く振り撒いては
儚さまで育てている
闇に紛れて
ひらひらと落ちて来る
一片の哀しみ
そっと手で受け止めると
私の心が秋色に染まる
朝日新聞 ローカル版 令和5年10月27日掲載
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